社会医療法人大道会
森之宮病院

「有給休暇の取得率向上
及び前残業削減への取組み」
「育児支援制度の認知度向上
による子育て支援」

設立 平成 18 年
所在地 大阪市城東区
病床数 351 床(一般病床 157 床、回復期リハビリ 151床、障害者 43 床)
入院基本料 7 対 1
職員数 全職員: 782 名 / 看護職:常勤 258 名、
非常勤 18 名 / 看護助手:常勤 16 名、
非常勤 20 名

取組のきっかけ、
取組前の問題点

 看護の質の向上と雇用の質を確保するためには、看護師が長く働き続けられる勤務環境の実現が重要であると考えていた。しかし、当院の離職率は平成 20 年には 26 %と大阪府の平均値よりも高く、なんとしても看護師にずっと働き続けたい病院として選ばれる職場環境作りが急務となった。そんな折、日本看護協会のワークライフバランスのプロジェクトが立ち上がり、その取組に参加してインデックス調査を実施した結果、勤務環境改善における様々な課題が判明した。
 課題の一つは、職員間における有給休暇取得率の不均衡である。どうしても管理職には「患者のためなら働くのは当たり前」「有給休暇は取らないのが当たり前」という考え方が根強く、有給休暇を取得できている職員とできていない職員に偏りがあった。また、前残業が看護現場にあったものの、管理部門へ前残業の届出申請書の提出がなく、病院として実態を把握できていなかった。しかし、インデックス調査の結果から前残業の実態が浮かび上がった。看護部ではこれらの実態把握を受けて、組織風土及び職員意識改革に向けた取組みを開始した。

取組の体制・
中心人物

 部長室から 3 名、科長から 1 名、本部総務部から 1 名の計 5 名による看護部主導での改善チーム体制をとっている。また、理事長・院長への報告だけでなく、職員への報告会を開催し、病院全体への周知も行っている。

概要

有給休暇の取得率向上及び前残業削減への取組み

 インデックス調査を実施したところ、有給休暇の取得状況に偏りがあった。また、管理部門は「看護職には残業がない」と思っていたが、看護現場からは前残業をしているとの回答結果となり、「残業」における管理部門と現場感覚の乖離が判明した。そこで、管理部門と看護現場の乖離を是正し、職員からみても「働き続けたい」と思う職場だと感じてもらえるよう、調査結果を基に改善施策を立案し、有給休暇取得率向上、残業時間の削減に向けた取り組みを開始した。
 有給休暇取得率の向上に向けては、有給休暇を「取りたくても取れない風土」や「取りたい人だけが取ればいいという考え」があり、取得状況に偏りがあった。そこで取得状況を洗い出し、管理職には会議にて実態を報告するだけでなく、日常のコミュニケーションを通して計画的に有給休暇を取得することの重要性を伝えた。
 また、前残業の削減に向けては、特に夜勤入り看護師の前残業が長く、看護師としての役割・責任を過大に意識して、業務に取組むためにはどうしても前残業が必要と考える職員もいた。その為、申し送り時間の開始を 10 分遅らせたりすることで前残業時間を削減し、職員一人ひとりに対して適正な労務時間管理が健康維持のためには不可欠であることを説明し、理解を求めた。

育児支援制度の認知度向上による子育て支援

 日本看護協会のインデックス調査だけでなく、継続的な勤務環境改善には「管理職である自分たちが直接、課題を聞き見つけていく」という主体的アプローチも重要だと考え、全職員との面談を実施し、生の声を収集した。その結果、看護部において、妊娠・出産等の際に活用できる産休・育休制度の認知度が低く、職員間において「結婚や妊娠をしたら離職しなければいけない・支援がほとんどない」という誤解が生じていることがわかった。
 そこで妊娠・出産・育児支援制度の認知度を上げ、子育て支援を積極的に打ち出すため、「妊娠をしたら、まず何をすればいいのか?」「復職した後は?」等の職員の不安を取り除くための支援制度の申請手続の書類の書き方や金銭に関る手続きの流れをまとめたパンフレットを作成し、職員に有用な情報をしっかりと伝えられるように整理した。

実施後の成果や
見えてきた課題

 有給休暇取得率向上の取組の結果、取得率が平成 22 年に 45 %だったものの、平成 26 年には 66 %まで向上させることができ、今後も個人の希望と有給休暇の取得状況のバランスをみながら施策を講じていく予定である。
 また、残業時間に関しては、平成 21 年の月 7.3 時間から平成 26 年は月 4.5 時間まで削減ができた。しかし、病棟によっては、在院日数の短縮により労働密度が増え時間外労働時間の短縮が難しくなっているところもある。面談調査の内容と照らし合わせながら、引き続き残業時間の削減に向けた取組みを実施すると同時に、目標数値(現在目標、残業月 3 時間未満)の妥当性を検証しながら進めていきたい。
 妊娠・出産、子育て支援制度の認知度向上の取組みによって、職員の自主的な制度活用における申請が増え、妊娠・出産による退職者は、遠距離から長時間通勤しなければならなかった通勤困難者のみに限定することができた。
 今後もインデックス調査等のデータだけに頼るのではなく、職員面談を通じたコミュニケーションを取ることで実態を把握し、改善を促す必要があると考えている。さらに、定年後の再雇用制度の中で短時間勤務を検討しており、退職された方を対象に連絡を取り、勤務形態の見直しによって様々な働き方ができる職場を作り、OB にも活躍できる場を提供したいと考えている。
Copyright (c) 大阪府医療勤務環境改善支援センター All rights reserved.